抗がん剤の副作用について絵本を出版したいー。そんな気持ちになった時に、偶然にも鉱脈社専務の川口道子さんがお見舞いに来られました。
私は必死で絵本の出版について話しました。川口さんは目に涙を浮かべて「ぜひ出版しましょう。酷なことを言うようですが、それなら抗がん剤の治療が終わってからでなく、治療中の体験を一行でいいので書きためてください。その方が気持ちが伝わりますよ」。
この言葉に、もうすぐ始まる抗がん剤治療への不安から、いつの間にか「よし、絵本を書こう! この体験を無駄にしないぞ」と使命感に変わり、もう怖いものはなくなりました。暗い病室の雰囲気を書斎に変え、患者を画家・藤野ア子に変えました。書斎となった病室には、色鉛筆や原稿用紙が並んでいました。
第1回目の抗がん剤が始まりました。赤い色の抗がん剤がチューブからゆっくり体の方へ下がっていきました。いよいよ、がんとの闘いです。
(宮崎市・AKOバンダナショップ 藤野ア子)