入院前日、病院からの指示で前あきの寝間着を買いに行ったときのことです。店員さんと世間話になり、「私、乳がんなんです」「あら、私の友達もよ」。その一言で、何だかホッとしました。「意外に多いんだな」。今まで悲劇のヒロインだった私が、急にいつもの自分に戻った気分でした。
入院は午後からで、昼食はほかの患者さんたちと一緒でした。患者さんはみんな笑顔で、まるで合宿にでも来ているようなにぎやかな昼食でした。
20―80代の乳がんの経験をした方が、自己紹介の代わりに、乳がんの大きさや手術の体験を話し、不安な私を温かく迎えてくれ、仲良くなるのに時間は掛かりませんでした。
手術の際に好きな曲を掛けられるそうで、「あなたは何にしたの?」楽しそうに話し掛けてくれる姿に、明日の手術の不安が飛んでいき、いつの間にか音楽の話で盛り上がりました。患者さんの中には両胸を切除した人もいました。
(宮崎市・AKOバンダナショップ 藤野ア子