造園家で造園史家でもあったマギー・K・ジェンクス氏は、乳がんが再発し「余命数ヶ月」と医師に告げられた時、強烈な衝撃を受けたといいます。
にもかかわらず、次の患者がいるのでその場に座り続けることが許されませんでした。
その時、がん患者のための空間がほしい。あと数ヶ月と告げられても生き続ける術はないかと、担当看護師のローラ・リー(現CEO=最高経営責任者)と必死に探したそうです。
「自分を取り戻せるための空間やサポートを」 マギーは、がんに直面し悩む本人、家族、友人らのための空間と専門家のいる場所を造ろうと、入院していたエジンバラの病院の敷地内にあった小屋を借りて、誰でも気軽に立ち寄れる空間をつくりました。
その完成を見ずに1995年、亡くなりましたがその遺志は、夫で建築評論家のチャールズ・ジェンクス氏に受け継がれました。
1996年に、「マギーズキャンサーケアリングセンター」としてオープンしました。徐々に全英の人達の共感を得て、2016年現在では英国で約20ヵ所のセンターが運営され、英国内外10ヵ所以上で開設に向けての準備が進でいます。
2013年には、英国外で初めてとなるセンターが香港に開設されました。
がん患者や家族、医療者などがんに関わる人たちが、がんの種類やステージ、治療に関係なく、予約も必要なくいつでも利用することができます。マギーズセンターに訪れるだけで人は癒され、さまざまな専門的な支援が無料で受けられます。
がんに悩む人は、そこで不安をやわらげるカウンセリングや栄養、運動の指導が受けられ、仕事や子育て、助成金や医療制度の活用についてなど生活についても相談することができます。
のんびりお茶を飲んだり、本を読んだりするなど自分の好きなように過ごしていてもいいのです。
マギーは、そこを第二の我が家と考えました。
建築をコーディネートするジェンクス氏は、マギーが残した「建築概要」に従うように建築家に設計を依頼。そこを訪れる人は、自らが尊重されているような気持ちになります。
共に悩んだローラ氏は、がん患者や家族、友人らの心を理解し、さまざまなケアを組み立てています。
マギーズセンターのように、がんと向き合い、対話できる場所が、病院の中ではない街の中にあること。それは本当に画期的なことです。
「場」の持つ力は、医療分野のみならず建築分野の専門家の共感も得てきました。
今、マギーズセンターには、世界中から多くの見学者がやってきています。
美術館のように魅力的であり、教会のようにじっくり考えることができ、病院のように安心でき、家のように帰ってきたいと思える場所。
いずれの建物にも大きな窓があり、外の風景がよく見えるようにしている。
建築とランドスケープが一体的な環境をつくり、患者の不安を軽減するという考え方に基づいている。
・自然光が入って明るい
・安全な(中)庭がある
・空間はオープンである
・執務場からすべて見える
・オープンキッチンがある
・セラピー用の個室がある
・暖炉がある、水槽がある
・一人になれるトイレがある
・280㎡程度
・建築デザインは自由
その他の世界の部屋
室内のビデオ